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やまんば

367 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/06/10 17:01
若いカップルが、ドライブの帰りにある峠道で。

日はとっぷりと暮れている。対向車もまばらで街灯もない。
助手席の彼女は話し疲れたのか、フリース毛布にくるまって軽い寝息を立てている。
運転している彼は、眠気を振り払うため車外の闇に目をこらしていた。

峠も中盤にかかろうかというころ、彼は1台の白塗りのセダンが、待避所に止まっていることに気がついた。
思わず彼は車を減速した。
こんな所に止まっている車は、例外なくホテルに泊まる金のない、恋人達の緊急のホテルがわりになっているからだ。
リアウインドウを覗き見た瞬間、セダンのドアがいきなり開き、中から出てきた女の人と目が合ってしまった。
彼は気まずかったので、車を急発進させその場を立ち去ろうとした。
女が彼の車を見ている。バックミラーごしに強烈な視線を感じ、ふと見ると、
なんと、女が走って彼の車を追って来るではないか!!
気まずさが、恐ろしさに変わる。彼は車をスピードアップさせた。
峠の細い道を彼の車は、限界まで加速してゆく。
しかし、とうてい人ではついて来れないような速度に、女はついてくる。
彼はブレーキランプに赤々と照らされた女の顔を見て戦慄した。

やまんばだ!やまんばだ!

幼い頃絵本で読んで以来、心の恐怖の頁に書き込まれていた映像がそこにあった。
髪を振り乱して迫り来る、しわだらけの醜悪な鬼女の顔。
彼は必死に謝りながら、アクセルを床まで踏み込んだ。

気がつくと、彼はふもとのコンビニの駐車場にいた。
助手席の彼女が目を覚ます。
彼は彼女に、今峠で起こったことの一部始終を話した。
話を聞くうち次第に目が冴えてきたのか、彼女の表情が驚愕に変わる。
彼は彼女に話すことで、助かったという実感が沸き、それまでの緊張が一気にほぐれていくのが分かった。

彼の話を聞き終えた彼女は、何か納得したように言った。
「私も…夢をみたの。あなたの車を必死で追いかける夢を…
 あなた、峠の真ん中で、私を置き去りにして行っちゃうのよ。
 いくら呼んでも叫んでも待ってくれないし。
 その時本当に、一瞬だけ『ころしてやる!』って思ったわ」
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