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Kの友達

270 :1:2007/07/16(月) 05:02:50 ID:F+lWdNCY0
今から15年くらい前、俺が小学生だったときの話。

俺の住んでた町は広いけど、その分人の密度が少ない過疎った街だった。
で、小学校が町の中心にあって、学校が少ないから、あっちこっちの地区から子供が通ってた。
まだ変質者がどうの、防犯ベルがどうの、って頃じゃなかったから、みんな友達2、3人で下校してた。
遠い子で1時間かけて徒歩で通ってたかな。冬とか暮れるのが早いから、遠い子は部とかにも入らず一気に帰った。
山道だったり、普通の舗装された道路でも、街頭なんか無いからね。
集落の明かりを目指して、2、3人で帰ってたわけ。今は通学班とか組んでるのかな。


271 :2:2007/07/16(月) 05:03:25 ID:F+lWdNCY0
でも、中にはそういう友達がいない子がいるわけね。俺の同じクラスにもそういう子がいた。仮にKと呼ぶ。
その子はちょっと知恵が遅れてる子だったけど、養護学級とか出なくて普通学級に通ってた。
でも、やっぱり地区の遊びグループには入れなかったのね。で、帰りはいつも徒歩30分の道を一人。
田舎だし、子供が知的障害だからって、親が車で迎えにいったりとかはしなかった。
東門から出る俺は、西門にむかうKをときどき見かけたけど、たいてい1人だったなあ。


272 :3:2007/07/16(月) 05:04:32 ID:F+lWdNCY0
ある日の道徳の時間、先生が言ったんだ。「最近、寄り道をしている子がいるらしいですね」って。
みんなドキっとした。そりゃみんなちょっとは、ゲーム機が豊富な家でちょっと桃鉄やるとか・・・してた。
でも、いつもはそんな事黙認してくれてる。
先生は続けた。
「別に、暗くならないうちは友達の家によってもいい。
 でも、危ないところに遊びにいく子がいる。それはやめなさい」
危ないところ?その話の真意を知ったのは、友達の噂話からだったんだ。


273 :4:2007/07/16(月) 05:05:35 ID:F+lWdNCY0
「あのさ、Kだよ。あいつ帰り道、橋の下で遊んでんだ」
確かにKの家の方角には、ちょっと大きな川が流れていて、最近出来た新しい橋と、となりに古い橋が架かっている。
新しい方は街頭があるけど、古い方にはそんなものはない。石造りの古い橋だ。
橋のしたには河川敷が広がっていて、一応階段があって、そこにいけるようになっている。
河川敷は子供の身長くらいの草が茂ってるが、橋の真下は光があたらないのか、ちょっとした空間が出来ている。
昼にはちょっとした秘密の遊び場みたいな感じで、マルイのエアガン持って水面を撃ちにいったりしてた。
Kはそんな遊びに来た事は無かったが。


274 :5:2007/07/16(月) 05:06:22 ID:F+lWdNCY0
それは新しい方の橋の話で、Kは古い方の橋の下にいたそうだ。
聞けば同じ地区のやつらは、帰りに新しい方の橋から、
Kっぽいやつが、いつも古い橋の下にいるのを見ていたそうだ。
子供は馬鹿だなーとか思って放っておいてたんだけど、
親にその話をしたらえらく気にして、学校に通報したんだそうな。
Kは昼に職員室によばれていった。
でも、Kはその寄り道をやめようとしない。


275 :6:2007/07/16(月) 05:06:56 ID:F+lWdNCY0
Kが帰ろうとしたとき、先生が話しかけたのを聞いた。
「友達と遊ぶのは大事だけど、危険なところで遊ぶのはもうだめだからね」
釘をさされてる。俺はちょっと笑ってしまった。
だけど、なんか違和感があった。
あいつはいつも一人でいるんだ。それに、橋の下にいたのもKひとりって聞いたのに。
もちろん、いくら注意されようとも、それからKが寄り道をやめることは無かったんだ。


276 :7:2007/07/16(月) 05:07:33 ID:F+lWdNCY0
祭りの夜。俺は友達と友達の家にいた。
祭り囃子が聞こえる薄暮の中、みんなで花火とかして、普段出来ない夜遊びを楽しんでた。

花火が終わり、俺たちはその家に一晩とまる事になった。
「俺、Kの友達、みたんだ」
一人が唐突に話し始めた。見てはいけないものをみた。そんな言い方だった。
おそらく、あまりの気味悪さにずっと胸にしまっていたのだろう。
「あいつ、橋の落書きにむかって、楽しそうに話してた。いつも」
みんな一瞬しんとなった。
夕暮れ時、カナカナ蝉がなくころ、Kはいつも『友達』といたのか。


277 :ラスト:2007/07/16(月) 05:10:19 ID:F+lWdNCY0
ある冬の日、ついに最悪の事が起こった。街の防災無線が子供の行方を捜している。Kがいなくなったんだ。
あまりに遅いので親が学校に連絡したところ、『とうに帰った』といわれたのだ。
折からの強い雨。公務員の俺の親父にはリンリン電話が舞い込み、コートを着て長靴を履いて出て行った。
「顔を知ってるか」ときかれて、俺は親父の車に乗せられた。行く先は当然川だ。

既に先生や近くの同級生、警察・・・台風みたいに人が集まってた。
でも、結局Kは見つからなかった。河川敷にも何も無い。
ただ、橋桁には赤いペンキでマルが描かれ、その中には人の顔のような落書きがあったのを覚えている。

『行方不明』の貼紙も色あせた頃。
その落書きも消されたのか、もうあとかたも無かった。

それだけの話だ。
友達。ひょっとしてKは今、その友達と一緒にいるのだろうか。

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