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鈴木

146 :長居です:04/09/02 16:36 ID:iSMsOmCs
高校のときの話。

友人山田(仮名)の両親が法事で、ニ、三日家を空けることになった。
俺と田中(仮名)は暇な夏休みを送っていたので、泊りがけで遊びに行くことにした。
夕方から集まり、何か料理とか作って、ちょっとした合宿気分。

夜になりだべっていたら、怖い話で盛り上がりそうになった。
ちょうどその時、山田の中学時代の友人鈴木(仮名)も遊びに来た。
大人しくて、真面目そう。一見いいとこの坊ちゃん風で、幼い感じがした。
かなり小柄で、高校生には見えなかった。
俺と田中は鈴木と初対面だったが、鈴木はすんなり話の輪に加わった。


147 :長居です:04/09/02 16:37 ID:iSMsOmCs
山田が都市伝説みたいな話をした後、俺がとっておきのネタを始めたのだが、田中のノリが悪い。
くだらないツッコミや煽りを入れて茶化してくる。
「おまえ本当は怖いんだろ。だから白けさせようとしてんだな」
「違うよ、おまえの話が全然怖くねえんだよ」
当時俺らはいろんなことで、互いにライバル意識みたいなのがあった。
それが口論に発展することもしばし。
見かねた山田が、諭すように提案してきた。
「おまえらどっちがビビリか、肝試しで対決してみたら?」
田中は乗り気だったが、俺は少し腰が引けた。
「○○橋の方に防災倉庫がある。そこは出るっていう噂だ。
 中学の時の先輩が、彼女と一緒に見たとか言ってた。そこでやろう」
鈴木はもう遅いので帰るとのこと。
三人で防災倉庫に向かったのは、十一時くらいだったか。


148 :長居です:04/09/02 16:37 ID:iSMsOmCs
橋の手前にちょっとした空き地があり、そこに古いプレハブ小屋があった。
入り口は建付けの引き戸で、掛け金に南京錠がしてあった。
「実はこれ、壊れてんの」
山田はその古い南京錠を外しながら、淡々と言葉を続けた。
「先輩、彼女を連れ込んでやってたらしい。で、二人して見たんだと。
 何でも、ホームレスがここで行き倒れになったことあって、多分それじゃないか」
中は教室くらいの広さで、土嚢やカラーコーン、ポールなどが整然と置いてあった。
数年来の川の護岸工事で、これらの用具も使用されず、部屋全体が埃っぽい。
天井には裸電球が一つ吊るされていたが、スイッチは手元になかった。
「一人でいるのはさすがにやばいから、おまえら二人で一時間。
 その後一人三十分の延長戦。それをギブアップした方が負けってことで」
田中はOKと即答した。にやにや笑いながら、俺を見ている。(もう戦いは始まってるってか?)
俺は田中の挑発に乗ってしまった。
「表から鍵掛けとく。一時間したら開けに来る」
「懐中電灯置いてけよ」
山田にそう言うと、スモーカー田中が百円ライターに着火して、
「これがあれば大丈夫だろ」と先手を打ってきた。


149 :長居です:04/09/02 16:38 ID:iSMsOmCs
土嚢に登れば裸電球を点灯させることもできるし、嵌め殺しの窓もある。
その下は、橋の常夜灯からの明かりも差し込んでいた。
俺はすかさずその場所を確保し、座り込んだ。
そして我慢比べと覚悟して、だんまりを決め込んだ。
田中はタバコに火をつけ、夜目に慣れた頃、口を開いた。
「山田の先輩って知ってるか?」
「さあね」
「ここに彼女連れ込んでやったとか言ってたよな。何してたのかね」
「アホか」
田中も静寂や暗がりが怖いのだろう。
だが、ここで普通にだべっていては勝負にならない。
俺は意地を張って田中を無視した。
「たぶん、この上にシートか何か敷いてやったのかな」
田中はすっと立ち上がり、辺りをライターで照らした。


150 :長居です:04/09/02 16:39 ID:iSMsOmCs
部屋の中には大と小の土嚢のブロックがあり、その間が通路になっている。
小さなブロックの方が窓側で、俺らはその上に腰掛けていた。
なぜか傍らに、蛇のようにドグロをまいたロープがあった。
「こっちの奥には何があんだろう」
田中は土嚢の間を注意深く歩き始めた。
信じられない行動だった。俺は取り残される恐怖に怯え、思わず後を追おうとした。
頭の中には、死んだホームレスのことしかなかった。
何かあったらすぐ田中の方へ逃げられるよう、俺は腰を浮かして恐怖に耐えた。

「おーい、線香があったぞ」
暗がりにぼんやり見えていた山田が、突然姿を消したかと思うと、間延びした声をあげた。
「蚊取り線香だけどなあ」
「最近誰かが入り込んだのかなあ?」
田中は、恐怖よりも性欲が勝っているらしい。
信じられない想像力だった。


151 :長居です:04/09/02 16:40 ID:iSMsOmCs
「おいおい、コンドーさんの袋があるぞ」
俺は自らの負けを確信した。
「あいつ○○中だよな。うちの高校、あそこ出身の可愛い子っていたっけか」
田中の質問に答える余裕はなかった。
「・・・そうだよなあ。可愛い子は○○女子に行っちゃうんだよな」
俺は田中の姿を確認するので精いっぱいだった。
「でもD組の○○、あいつ確か○○中だろ。けっこう良くねえ」
ライターを点火するたび、あいつの姿が浮かび上がる。
「体操着の胸のあたりとかな」
話し振りに、ちょっと違和感を覚えた。
「おいっ!おまえ誰としゃべってんの?」

うあああああああああ
一瞬沈黙があり、田中がわめいた。
土嚢の陰から飛び出すと、こちらを無視していきなり扉に体当たり。
建付けが悪かったのか、その引き戸は簡単に外れた。
街灯が部屋の中を照らし、俺はその奥にちらっと視線を送った。


152 :長居です:04/09/02 16:40 ID:iSMsOmCs
あれっ!あいつ鈴木じゃないか。
躊躇する間もなく、俺は駆け出す田中の後を追った。

「ちょっと待て!あれ鈴木だよ」
コンビニの前で田中に追いすがり、やっと息をついた。
「だまされたんだよ。山田と鈴木がぐるになって、俺らを脅かしたんだって」
「鈴木?鈴木って誰?」
きょとんとした顔つき田中。
「はあ?」
二人の会話はまったくかみあわなかった。
「じゃあ、あそこで誰と話してたんだよ」
「暗くて分かんなかったけど、てっきりおまえだと思ってた。
 顔は見えなかったけど、俺の後ろに確かに誰かがいた」
「それが鈴木なんだって」
そう言いながら、こんないたずらや悪ふざけするような奴には見えかったな、と思った。
正面に座り、一番熱心に俺の話に耳を傾けていた。
ほとんど喋らなかったが、時折軽く相槌を打ったりして、好感すら持てた。
鈴木なんて奴は訪ねてこなかった、と田中は言い張る。
とにかく山田に聞くしかないなということで、俺らは足早に山田宅へ向かった。


153 :長居です:04/09/02 16:41 ID:iSMsOmCs
チャイムを鳴らすと、山田が不安げな表情で出てきた。
「おまえら、どこに行ってたんだよ」
俺と田中は唖然として顔を見合わせた。

「だから、飯食った後、ソファに座って三人で野球中継見てたよな」
ここまでは皆同じだった。
「俺は昨日遅かったから、野球見ながら寝ちゃったんだよ」と山田は言う。
「おまえが眠そうにしてたから、俺が怪談話を始めたんだよ」と俺。田中も同意する。
「話してる最中に、鈴木っていう中学の同級生が部屋に入ってきたろ」
俺だけが確認している。
「俺、鈴木って友達いないし、そいつが勝手に家に上がりこんだのか?」
言葉に詰まると、田中が後を引き継いだ。
「あの川べりの小屋に、案内したのは覚えてるだろ。おまえが言い出したんだ」
自転車で行こうと言う俺を無視して、山田は一人先に歩き出した。
防災倉庫に着くまで、ずっと無言だった。
到着するなり、あらかじめ決められていたように、肝試しの設定を滔々と喋りだした。
まさか、夢遊病者のできることじゃない。


154 :長居です:04/09/02 16:42 ID:iSMsOmCs
山田は頭を抱え込んだ。
「だ か ら、もう完全に寝てたんだよ」
怯えているのかもしれなかった。
「じゃあ、あの小屋のことも知らないのか?」
絶句した田中に変わって、俺が訊ねる。
「知ってる。あそこは中学の時の通学路だった」
山田は真っ青な顔になって、震えているように見えた。
「ずっと前、いじめにあってた奴が、あそこで首吊り自殺したらしい」
全員黙り込んでしまった。
俺と田中はいったい何を見たのか分からず、混乱していたと思う。

「寝てて、夢を見た」
沈黙を破るように、山田がふっと口を開いた。
「おまえらが、どっかの部屋にいて、首吊って、死んでた」
三人同時に顔を上げた瞬間、部屋の照明がパッと落ちた。
その刹那、ソファーテーブルの上を、スーと白い人影が通り過ぎた。


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