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口裂き女

297 :本当にあった怖い名無し:05/01/21 22:53:03 ID:BzMKsVfx0
バスを待っていた。もう夜も遅く、最終バスの時間になっていた。
時間帯のせいか、俺の他に待っている奴は一人しかいない。
変な奴だった。顔の下半分はマスクで完全に覆われてる。まだ若い女のようだが…

「私のこと、変だと思ってるでしょ?」
不意に声をかけられて俺は面食らった。女の声は妙に低かった。
「いえ、別にそんな…」
女は声を上げて笑った。
「別にいいのよ。なれてるし」
「はあ…」
俺は女の事が少し怖くなった。
昔こんな女が出てくる話を聞いたことがある。確か…
「少し歩きません?どうせバスはもう来ないんだし」
と女に言われ、不審に思って腕時計を見ると、もう日付の変わっている時間だった。
もうバスは出たあとだったのだ。
女は一人で歩き出した。俺は首をひねりながらも、好奇心からついていくことにした。

「夜道って、独特の雰囲気があるのよね。ぼんやりしてると、闇に吸い込まれそうな…」
何が言いたいんだろう?俺は薄ら寒い物を感じた。
「あの…」
女の背中に声をかけた。
「…なんて呼べばいいですか?」
最初、女がなんと言ったのか聞こえなかった。
「口裂き女」
その瞬間、俺は思い出してしまった。子供の頃よく聞いた怪談のことを…
「ふふふ、脅かそうとしてると思ってるでしょ?でもね、本当なの」
いつの間にか雨が降ってきた。頬が冷たい。


298 :297の続き:05/01/21 22:54:09 ID:BzMKsVfx0
女がマスクを取った。
化膿して、まさに『裂けた』と言った感じに、横に長く切れた口があった。
俺は言葉を失った。
女は立ち止まって、ぽつりぽつりと、
事故で口が裂け、応急処置をしたが間に合わなかった事など、『口裂け女』になった経緯を話してくれた。
女が口を閉ざすと、俺はなんと言えばいいかわからなかった。
女は俯いて、泣いているように見えた。

「何でその話を僕に?」
女は俺の質問が聞こえなかったように、また話し始めた。
「エイズの統計の話、知ってる?
 アメリカの偉い大学の先生が、自分のゼミの学生に、
 『もし自分がエイズになったらどうするか』と質問したの。何年にもわたってね。
 その結果はどうなったと思う?」
気づかないうちに手が汗ばんでいた。そしてあることに気づいた。
なぜこの女は、来るはずもないことを知っていながら、バス停にいたんだ?
そして…
「『エイズの撲滅活動などを行って、自分のような悲劇が2度と起こらないようにする』
 と答えた学生は、20%にも満たなかったそうよ。
 残りはほぼ一つの答えを選択した。
 『セックスをしまくって、他の人にも感染してやる』ってね」
女の声が、すぐ耳元で聞こえているかのように感じた。
「人間って結局、自分が理不尽な目にあったら、
 同じ事を他人にもやってやろう、って思ってしまうものなのね…
 私だって人間だもん。自分だけこんな目に遭うなんて…ね?」
女はコートのポケットから何かを取り出した。…ナイフのようだった。
女は奇妙な笑みを浮かべて近づいてくる。雨は先ほどよりも強くなっていた。
「最初に言ったでしょう?私は『口裂け女』じゃなくて・・・」
一瞬の静寂。
「く・ち・さ・き・お・ん・な」

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